井の頭公園の池の「かいぼり」とは?成果やボランティア活動を紹介!

井の頭公園の「かいぼり」

みなさんは「かいぼり」という言葉を聞いたことがありますか?

漢字で書くと「掻い掘り」なので、「何かを『掻き出して、掘る』ような作業では?」と見当をつけられなくもないですが、あまり耳馴染みが無い言葉ですね。

そんな「かいぼり」が、「井の頭公園」の「井の頭池」で、2014年から2017年にかけて3回も行われたという情報を聞きましたので、井の頭公園の「かいぼり」について調べてみました。

目次

「かいぼり」とは?

「掻い掘り(かいぼり)」というのは、池や沼の水をくみ出して泥をさらい、魚などの生物を獲り、天日に干すことです。

農業用の「ため池」を維持するために行われてきた、日本の伝統的な管理方法です。

稲作が終わる晩秋から早春にかけての農閑期に池の水を抜き、天日に干し、堆積したヘドロや土砂を取り除いて肥料にし、獲った魚を利用してきました。

栄養塩類を含んだ泥や水を排出し、また池の底を空気にさらして微生物による分解を促進することで、水質を浄化する効果もあります。

現在は、農業目的の他に、水質改善や、外来生物駆除のための「かいぼり」が各地で行われています。

井の頭公園の「かいぼり」

井の頭公園の「かいぼり」

引用:東京都西部公園緑地事務所

2017年に「開園100周年」を迎えた「井の頭恩賜公園」では、2014年、2015~2016年、2017~2018年と3回の「かいぼり」を行ってきました。

「かいぼり」後には、多くの在来動植物の回復や、池の透明度の向上などがみられ、成果が表れてきています。

■以前の「井の頭池」

井の頭池

引用:東京都公園協会

「井の頭恩賜公園」内の「井の頭池」には、かつては豊富な湧水がありました。

しかし、1960年代に湧水が枯渇し、水質が悪化しました。

1980年ごろからオオクチバスなどの外来種が増え、モツゴ、エビ類などの在来種が減ってくるという状況になってしまいました。

■「開園100周年」に向けた3度の「かいぼり」

井の頭池

引用:東京都西部公園緑地事務所

「井の頭池」では、水質の改善と外来種の防除を目的として、2017年の「開園100周年」に向けて3回の「かいぼり」を実施してきました。

最初の「かいぼり25」は、2014年1月~3月に実施され、対象の池は「お茶の水池」と「ボート池」でした。

2回目の「かいぼり27」は、2015年11月~2016年3月に実施され、対象は「井の頭池」全域でした。

3回目の「かいぼり29」は、2017年12月~2018年3月に、これも全域を対象に実施されました。

今後も数年ごとに繰り返し行う予定だそうです。

井の頭公園の「かいぼり」の目的

かいぼりのフロー

引用:東京都西部公園緑地事務所

■外来種の防除と在来種の保護

かいぼり

引用:東京都西部公園緑地事務所

もともと「井の頭池」には、モツゴ(くちぼそ)やトウヨシノボリ(ハゼ)などの在来魚やエビ類が生息していましたが、オオクチバスやブルーギルなどの外来魚の流入によって、その数が激減してしまいました。

現在、池にいる魚の90パーセント以上がオオクチバス、ブルーギルなどの外来魚で、在来生物を捕食して、生態系に大きなダメージを与えています。

池の水を抜くと魚の逃げ場がなくなるため、魚類等を効率よく捕獲することができます。

「井の頭池」の「かいぼり」では、多くのボランティアが参加し、オオクチバス、ソウギョなどの多数の外来種を駆除しました。

「かいぼり」によって、外来魚を排除することで、在来の生きもの復活が期待されました。

■水質の改善

水質の改善

引用:東京都西部公園緑地事務所

「井の頭池」は、かつては水量が多く飲み水として使われるほどきれいでしたが、周辺地域の開発が進み、湧水が枯渇してしまいました。

現在は地下水をポンプでくみ上げています。

その結果、池の水は植物プランクトンが増加して濁り、水質悪化の原因となる窒素やリンが増加してしまいました。

「かいぼり」で池の水を抜き、池底を天日干しすることで、泥の中の窒素やリンが減少し、水質が改善されます。

■「井の頭池」の目標

井の頭池の目標

引用:東京都西部公園緑地事務所

魚やエビ、カメ、水鳥など多様な在来種と埋土種子等から発芽した水草を保全し、井の頭池の生態系を回復させます。

自然の浄化能力を活用し、池の底が見えるような水質を維持していきます。

さらに、外来種が再び入ってこないよう、来園者の理解と関心を高めます。

井の頭公園の「かいぼり」の成果

■水草の復活

水草の復活
池底のイノカシラフラスコモ

引用:東京都西部公園緑地事務所

「かいぼり」後、これまで絶滅したと考えられていたイノカシラフラスコモやその他在来の水草が、約60年ぶりに池底より復活しました。

しかし、外来種のアメリカザリガニが増え、貴重な水草に被害を与えるようになったため、駆除を行っています。

これらの水草は種の系統保存のため、園内外の施設でも保全しています。

■在来種の増加

在来種の増加
カイツブリの親子

引用:東京都西部公園緑地事務所

クロダハゼやエビ類などの在来の水生生物が増加し、それらを食物とするカイツブリが増殖するようになりました。

水草も復活し、トンボの種類と個体数も増加しました。

「かいぼり」後も在来種の生育・生息状況をモニタリングしています。

井の頭公園の「かいぼり」のボランティア活動

「かいぼり」のボランティア

引用:東京都建設局

「井の頭恩賜公園」では、より多くの方に「かいぼり」関わってもらえるよう、都民協働で実施してきました。

「かいぼり」のボランティアには、下記のような参加方法がありました。

■井の頭かいぼり隊

井の頭かいぼり隊

引用:東京都建設局

池の排水後に、大勢のボランティアと一緒に魚を捕る際に、ボランティアのリーダーとしてイベントの進行を補佐し、捕まえた外来魚の記録作業、来園者への解説などを行いました。

また、年間を通じて池の生き物調査等にも関わるなど、長期的に池の自然再生事業に関わっていきます。

■おさかなレスキュー隊

「井の頭かいぼり隊」であるリーダー達と一緒に、干し上がった池に入って魚を捕ったり、陸上での作業を行ったりする当日限定のボランティアです。

ブラックバス、ブルーギルなどの外来魚を排除し、モツゴなどの在来種を救出しました。

■体験イベント

井の頭かいぼり隊

引用:東京都建設局

池干し期間中に、井の頭池の自然を学ぶ体験イベントを開催しました。

普段は入れない池底をめぐり歩く「池底ツアー」などもありました。

■見学

池干し期間中には、「かいぼり」事業についての解説や、捕獲した魚類の展示を行い、現在のかいぼりの状況を知らせる情報発信基地「かいぼり屋<かいぼりステーション>」を池のほとりに開設しました。

まとめ

「井の頭公園」の「かいぼり」についてご紹介してきましたが、「開園100周年」という節目に「池の再生」を行うなんて、未来につながる素敵な取り組みですね。

次回の「かいぼり」の予定が決まったら、「ボランティアとして参加してみたい」と思われた方も、いらっしゃるんじゃないでしょうか。

本サイトでは、「井の頭公園」にまつわるあれこれをご紹介した「井の頭公園の魅力」や、公園内の動物園のレポート「井の頭自然文化園で動物と触れ合おう」、公園の四季を彩る様々な花々をご紹介した「井の頭公園の四季を彩る花々」でも、「井の頭公園」の様々な魅力をお伝えしているので、併せてご覧ください。

住所(公園案内所)
武蔵野市御殿山1-18-31
電話番号(公園案内所)0422-47-6900
アクセスJR中央線・京王井の頭線「吉祥寺」駅下車 徒歩5分
京王井の頭線「井の頭公園」駅下車 徒歩1分

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