東京女子大学の歴史を徹底調査!

前回の[【吉祥寺の歴史】成蹊大学の歴史を徹底調査]でご紹介した成蹊大学に続いて、「創立100周年」を迎えた東京女子大学について徹底調査しました。

駅から徒歩で向かうと、「西荻窪」駅からは徒歩約12分、「吉祥寺」駅からは徒歩約15分ですが、「吉祥寺」駅からバスを利用して通学する方が多いようなので、「吉祥寺の大学」のもう一つの代表として、東京女子大学歴史教育理念キャンパス内の歴史的建造物などについてご紹介します。

目次

東京女子大学について|東京女子大学を徹底調査

本館

都内有数の高級住宅街の東京都杉並区善福寺に位置する東京女子大学は、北米プロテスタント諸派の援助を得て、1918年(大正7年)に、「学生ひとりひとりを大切にし、キリスト教を基盤としたリベラル・アーツ教育を通じて高度の教養と専門能力を授け、真理と平和を愛し人類の福祉に寄与できる女性を養成すること」を教育理念として掲げて創立されました。

約9万5千平方メートルの美しいキャンパスには、芝生が目にも鮮やかな広場や、緑豊かな樹木に囲まれたオープンスペースがあり、瀟洒な本館を中心にパイプオルガンがあるチャペルなどの歴史的な建造物が整然と並んでいます。

最新の設備を備えたCALL教室、自由に利用できるコンピュータ教室、トレーニングルームやシャワー室も完備した体育館棟など、学生の声を取り入れながらそれぞれの学びをサポートしていて、特に図書館は「学習滞在型図書館」として学生の利用率が非常に高く、意見交換をしながら学習ができる「コミュニケーション・オープンスペース」や、ゼミ発表などに利用できる「プレゼンテーションルーム」、学習の合間に息抜きができ、飲食可能な「リフレッシュルーム」など多様なニーズに応える空間が用意されています。

「キリスト教の教えに基づいた人格教育を土台に、専門性をもった教養人に育てる」ことをビジョンとし、2018年(平成30年)に創立100周年を迎えた同校の卒業生は、全国的に女子大人気が下がる中、「大手企業への就職率が9割以上」という女子大でトップクラスの実績を上げているそうです。

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プロテスタント

中世末期から起こったキリスト教会改革運動に賛同して、それまでのローマ・カトリックから分離独立した、キリスト教の「新教」。

「プロテスタント」は諸教派の総体であって、カットリックのローマ教皇にあたるような代表者や、全体を統括するような教団連合組織は存在しない。

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リベラル・アーツ教育

専門科目を深く掘り下げる「専門教育」に対して、一般教養を広く学ぶ「教養教育」。

ギリシャ・ローマ時代に理念的な源流を持ち、ヨーロッパの大学制度において中世以降、19世紀後半や20世紀まで「人が持つ必要がある技芸(実践的な知識・学問)の基本」と見なされた自由七科(文法、修辞、弁証、算術、幾何、天文、音楽)のこと。

現代では、「学士課程において、人文科学・社会科学・自然科学の基礎分野を横断的に教育する科目群・教育プログラム」とされている。

リベラル・アーツ教育|東京女子大学を徹底調査

東京女子大学は、キリスト教の精神に基づいて、一貫して「リベラル・アーツ教育」を実践してきました。

「高い専門性を持ちつつ、文理の垣根を超えた幅広い教養、高い語学力を持ち、自ら課題発見をする」といった、これからのAI時代に求められる能力を培うことができるといわれている「リベラル・アーツ教育」によって、広い識見と創造性を有した「専門性をもつ教養人」の育成を目指しているとのこと。

自由な学びを支える「全学共通カリキュラム」により、1年次から演習形式の授業を多く開講し、「異なる意見と向き合い、自分の意見を伝える力、」「協働して課題の解決に当たる」などの自ら学び考える力を養成。

4年次ゼミの平均人数は文系10人前後、理系5人前後。全員必修の卒業論文・卒業研究に向け、少人数のゼミで刺激し合いつつ、自分の課題と向き合います。

さらに、学生一人ひとりに専任教員のアドバイザーがつき、オフィスアワーを設けて日常的に相談に応じ、一人ひとりの学生のそれぞれの個性を把握した丁寧な指導をしてくれるそうです。

実践的な英語教育|東京女子大学を徹底調査

東京女子大学では、「国際社会へ飛び出して活躍できる女性を育成する」ために、特に英語教育に力を入れています。

参加型の少人数授業による英語教育

「習熟度別クラス編成」「ネイティブスピーカーによる授業、」「選抜制のキャリア・イングリッシュ課程」「英語トレーニングクラス」「自宅からも使えるコンピュータによる英語自習プログラム」「語学研修」「留学」など、独自のプログラムで実践的な英語運用能力を高めます。

入学時と2年次に全員が「TOEFL ITPR」を受験し、各自の英語の伸びを確認し、その後の学習の励みとしています。

留学や短期海外研修など国際的な体験の機会が豊富

現在、英語圏の6か国22大学と協定を結んでおり、留学する学生対象の奨学金があります。
大学の休暇期間中に実施する「ケンブリッジ教養講座」や英語の語学研修には、毎年多くの学生が参加していて、「留学説明会」や「IELTS公式試験」「IELTS対策講座」「留学ファシリテーターによる個別相談」なども実施てし、留学をサポートしています。

東京女子大学の開学|東京女子大学を徹底調査

東京女子大学の開学

引用:東京女子大学

1900年(明治33年)、世界中の国が参加する万国博覧会が開催されていたパリ。この街で、万博の審査委員として滞在していた新渡戸稲造と、第二次の女子官費派遣留学生としてイギリスで学び、帰国の途にあった安井てつは出会いました。

日本の女子教育の必要性を早くから示唆し、『Bushido:The Soul of Japan(武士道)』を前年に書き終えたばかりの新渡戸と、差別のない大学教育を日本の女子に与えたいという思いを強めていた安井。

初対面にもかかわらず「スピリッチュアル・フレンドに相成り」「二十年以来の胞友の如く」と安井が友人への手紙に記すほどの運命的な出会いでした。

その18年後、北米のプロテスタント諸教派の援助のもと、1918年(大正7年)に東京女子大学は開学しました。

初代学長新渡戸、学監安井(のちに第2代学長)、そして常務理事として、1915年から設立のための委員を務めていたA.K.ライシャワーが就任。

当時の日本の教育制度では閉ざされていた、女性への大学の門戸を開放し、キリスト教主義に立脚した最高のリベラル・アーツ教育を行うことを目指しました。

創立以来の理念は、単に知識を求めるだけではなく、人間としての英知を養う教育。

「豊かな教養に基づく幅広い視野と高い専門性を身につけ、自立した女性を育てたい」その情熱は変わることなく、女性の生涯を支援していくための大学へと発展し、卒業生たちは、日本中で、そして世界で活躍しています。

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新渡戸 稲造

新渡戸 稲造
1862年9月1日(文久2年8月8日)生~1933年(昭和8年)10月15日)没
日本の教育者・思想家。農業経済学・農学の研究も行っていた。
国際連盟事務次長も務め、著書『武士道』は、流麗な英文で書かれ、長年読み続けられている。
日本銀行券の五千円券の肖像としても知られる。
東京女子大学初代学長、東京女子経済専門学校(東京文化短期大学・現:新渡戸文化短期大学)初代校長。

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安井てつ

安井てつ
1870年3月24日(明治3年2月23日)生~1945年(昭和20年)12月2日没
日本の教育者。女子教育に力を注ぎ、新渡戸稲造とともに東京女子大学を創立。
東京女子師範学校卒業後、イギリス留学中にキリスト教の信仰を持ち、ケンブリッジ大学とオックスフォード大学で教育学・心理学などを修学。
1904年から3年間は、タイ(当時、シャム国)の皇后女学校教育主任を務めたのち、ウェールズ大学にも学ぶ。

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A.K.ライシャワー

A.K.ライシャワー
1879年9月4日生~1971年7月10日没
アメリカ出身の在日宣教師、駐日大使の「エドウィン・ライシャワー」の父。
1905年に「アメリカ長老派教会」の宣教師として来日。その後、シカゴ大学、ニューヨーク大学で、神学博士の学位を取得したのち再来日して、明治学院高等学部長を務める。
日本文化の研究・紹介に貢献すると共に、東京女子大学の設立に参画し、設立代表者として、のちに常務理事として財政を担当。

東京女子大学の歴史的建造物|東京女子大学を徹底調査

東京女子大学のキャンパス内にある歴史的建造物群は、建築家アントニン・レーモンドの設計によるものです。
いずれもレーモンドの戦前の作品として知られる貴重な建築で、全7棟が「文化庁登録有形文化財」に登録されています。

チャペル・講堂

チャペル
講堂

1938年(昭和13年)建築、平成10年度「文化庁登録有形文化財」登録

ステンドグラスが美しいチャペルでは、毎朝礼拝を行っています。

また、パイプオルガンによるチャペルコンサートを開催し、学外の人々からも親しまれています。

講堂では、入学式、卒業式、講演会などが行われ、秋には大学祭(VERA祭)の会場にもなります。

本館

本館

1931年(昭和6年)建築、平成10年度「文化庁登録有形文化財」登録

正門をくぐるとまず目に入る、緑の芝生に映える白亜の本館は、美しいキャンパスのシンボルです。

長く図書館として利用されてきましたが、現在は創立90周年を機に開設された「新渡戸記念室」があります。

正面入口前の2本の木は12月にはクリスマスツリーとなります。

ライシャワー館

ライシャワー館


1927年(昭和2年)、平成10年度「文化庁登録有形文化財」登録

創立当時から長く常務理事を務めたA.K.ライシャワー博士一家が暮らした建物です。

欧米風の外観や格調高い家具調度品、周囲の環境が、学内の賑わいとは別世界の落ち着いた佇まいを見せています。

建物の1階は、2003年より国際交流センターにより外国人留学生の交流の場として活用されています。

外国人教師館

外国人教師館


1924年(大正13年)建築、平成10年度「文化庁登録有形文化財」登録

創立初期の建造物のひとつで、本学に派遣された外国人の教師たちがここで生活しました。
現在は、1階に女性学研究所があります。

安井記念館

安井記念館

1925年(大正14年)建築、平成10年度「文化庁登録有形文化財」登録

第2代学長安井てつの住居として使用されていました。

現在は本学のキリスト教活動・行事の拠点であるキリスト教センターとして使用されています。

7号館(西校舎)

7号館(西校舎)


1924年(大正13年)建築、平成10年度「文化庁登録有形文化財」登録

創立初期の建造物のひとつで、現在も教室棟として使用されています。

6号館(東校舎)

6号館(東校舎)


1927年(昭和2年)建築、平成10年度「文化庁登録有形文化財」登録

創立初期の建造物のひとつで、VERA広場をはさみ7号館と対になった建物です。

現在は、教室のほかに保健室等があります。

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アントニン・レーモンド
1888年5月10日 生~1976年10月25日没
チェコ出身の建築家。
フランク・ロイド・ライトのもとで学び、帝国ホテル建設の際に来日し、その後日本に留まってモダニズム建築の作品を多く残し、日本人建築家に大きな影響を与えた。

東京女子大学 図書館|東京女子大学を徹底調査

東京女子大学

「東京女子大学」内にある「東京女子大学 図書館」は、地上3階、地下1階で、総床面積は5,763平方メートル、閲覧席は約750席。

現在の蔵書は約58万冊(和書約42万冊、洋書約16万冊)、逐次刊行物約6,800種で、他に電子書籍やオンラインデータベース等も多く所蔵しています。

杉並区・練馬区・武蔵野市・三鷹市在住・在勤の18歳以上の女性(高校生は除く)の閲覧席の利用および開架資料の閲覧、貸出を実施していましたが、現在は新型コロナウイルス感染症拡大防止のために学外利用者の利用は中止中です。

著名な出身者|東京女子大学を徹底調査

政治家
・堂本暁子(元千葉県知事、元参議院議員)
・園田天光光(日本初の女性代議士39人の一人、元労働者農民党衆議院議員、園田直夫人)

文学者
・有吉佐和子(小説家、女流文学賞受賞)
・瀬戸内寂聴(小説家、女流文学賞受賞)
・永井路子(小説家、直木賞受賞)

芸術家
・森英恵(ファッションデザイナー)
・如月小春(劇作家)

マスコミ
・鷹西美佳(元日本テレビアナウンサー)
・野村真季(テレビ朝日アナウンサー)

芸能人
・竹下景子(女優)
・多部未華子(女優)

まとめ|東京女子大学を徹底調査

1900年(明治33年)、万博が開かれていたパリの地で運命的に出会った新渡戸稲造と安井てつの、「差別のない大学教育を日本の女子に与えたい」という思いが結実して開校した東京女子大学は、2018年に創立100周年を迎えました。

これからも、キリスト教の精神に基づくリベラル・アーツ教育実践的な英語教育によって、広い識見と創造性を有した「専門性をもつ教養人」が、吉祥寺のキャンパスから続々と誕生していくことでしょう。

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