特集

吉祥寺を支えてきたあの人、あの店主 Vol.2(なぎさや)

昭和22年創業。

ハモニカ横丁の一角にある「なぎさや」の歴史は、戦後の闇市から始まった。

現在店を切り盛りする二代目店主の入澤勝さんのお父さんが、現在の場所に食料品店を開店。

缶詰や乾物など、さまざまな品物を販売し、地域住民の食卓を支えてきた。

 

勝さんは、26歳の頃に店を継ぐことを決めるが、それまでは山登りに没頭していたそう。
「中学生の頃、親父に『青春の浪費をするんじゃない』と言われて、それで山登りを始めたんです。

大学では山岳部に入り、1年の150日くらいを山で過ごした。

大学4年の時にはヒマラヤ登山隊の隊員として、1個上の先輩だった植村直己さんの『ゴジュンバ・カン』(標高7646m)の世界初登頂にも貢献。

 

卒業後も日本全国の山を調査する会社にスカウトされて、相変わらず山で過ごす日々を送っていたんだけど、結婚を機に、家業を継ぐことにしたんです。

最初は食料品店として繁盛していたけれど、時代とともに、スーパーのような大型店が次々とできて、客足は少しずつ減り始めた。

うちのような小売店が生き残っていくには、何か付加価値が必要だと思い、僕が35歳の時に、干物や珍味をメインとした今のスタイルに変えたんです」「なぎさや」の人気商品は、マスノスケや紅鮭といった汐鮭。

嚙みしめるほどに旨味が溢れ、一度食べたら忘れられないほど美味で、人生最後の晩餐に食べたいという人が多い。

「昭和60年頃から、そこらでは絶対に手に入らない高品質な汐鮭を売り始めたら、『こんなおいしい鮭、食べたことない!』と、お客さんの間で評判なり、瞬く間に人気に。

雑誌などでも紹介されて、著名人や遠方からの注文も増えたんです」たしかにスーパーと比べれば、少々値は張るが、満足度は桁違い。

汐鮭があるだけで、食卓が一気に華やぎ、とっておきのご馳走になる。

取材中もお客さんがひっきりなしに訪れ、決め打ちで商品を買いに来る人もいれば、今日のお薦めを聞いて夕飯の献立を決める人も。

勝さんは、今も週2回豊洲市場を訪れ、複数の仲買業者と取引し、自ら目利きする。

「3時ごろ起きて、店まで自転車で来て、始発で豊洲に行くんだ。自分の目でしっかり選んだ物だからこそ、気合を入れて商売できるし、自信を持って薦められる。

今は〝人生の浪費をしない〟ために生涯商人として、店に立ち続けたい」

ヒマラヤ遠征後に撮影した記念写真。左から2 番目が入澤勝さん。

右端が植村直己氏。その隣はエベレストを初制覇したヒラリー卿氏。

マスノスケ1 枚800円や、中辛、極辛から選べる紅鮭1枚600 円のほか、旬の干物など、常時30 種類以上がショーケースに並ぶ。

文/鈴木恵美
ライター。武蔵野市歴18年。吉祥寺で飲み屋を開くのが夢。取材してほしい人大募集。

住所武蔵野市吉祥寺本町1- 1-1
電話番号0422-22-7130
営業時間10:00~18:30
定休日水曜

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