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【中神円コラム】10秒の隔たり,夜どうなっているのか知りたい|吉祥寺時間コラム

10秒の隔たり

わたしは専門店が大好きで、スーパーに行けば一度で済むところ、八百屋、魚屋、肉屋とわざわざはしごすることも多い。

スーパーだって新鮮で良いものは揃っているが、「それだけ」を扱っている専門店に大いに魅力を感じるのだ。
吉祥寺にある専門店のうち、中神の好物であるチョコレートを扱っているのがプレスキルショコラトリーだ(我が家の昨年のクリスマスケーキもこちらのもの)。

ここの看板商品のひとつにフォンダンショコラがあり、実はお土産用にも自宅用にも何度も購入している。

そのままでも冷やしても美味しいが、すっとスプーンを入れたときに中のチョコレートがとろりと溢れ出すフォンダンショコラの醍醐味を楽しむためにレンジで温める。
公式サイトを見ると「600Wで20~30秒温める」との記載があり、わたしは逡巡してしまった。

「10秒の隔たりは大きくないか?」

結局、間をとって25秒温め、無事に美味しくいただいた。

今度は20秒と30秒、まるで理科の実験のようにそれぞれ食べ比べてみようと思う。

冬のお楽しみ

自炊をするときは、大体いつもスーパーで食材を見て、それから献立を考え始めるのだが、今日はもう絶対おでんにしようと思って、昨晩から鍋に水を入れ、昆布2枚と煮干し3匹を浸けておいた。

おでんのメインキャストとしてわたしが迎え入れたのが、吉祥寺の「つかだ」の練り物たち。
つかだはダイヤ街に位置する、練り物やおでん種の専門店で、いつ行ってもお客さんで賑わっている吉祥寺の人気店だ。
お馴染みのおでんの具材から、ちょっと変わり種の練り物もあり、とにかく種類が豊富なのでいつも選ぶのに悩んでしまう。

自分の前に並んでいるベテラン主婦さんたちが何を選ぶのか、様子を伺いつつ、レンコン天、豆天、それと日替わりで半額になっていたひじき天、餅入り巾着、牛すじを買った。

今日ここに並んでいるみんなの食卓も、やはりおでんなのだろうか。そう思うとなんだか可愛い。

夜どうなっているのか知りたい

夜の井の頭公園を散歩してみたいとずっと思っていた。
けれど、ひとりで行ってみるのは心もとなく、なかなか機会に恵まれずにいた。
八月も終わりに差し掛かった頃、今年初めの映画の現場で一緒になり、すっかり仲良くなった照明部の友人と遅めの時間から吉祥寺で飲むことになった。

店を出たあと、二人の足は自然と井の頭公園へと歩き出す。

夜の井の頭公園は、自分たちと同じように散歩をしている人や、暑くなる前に犬の散歩を済ませようとしている人、ランニングをしている人が点在しているだけだった。

普段は池に散り散りになっているスワンボートも行儀よく整列している。

動物園の動物たちもきっと今は眠っているのだろう。

人間が生活するすぐ傍で動物が暮らしていると思うと不思議な気持ちになった。

 

「人とすれ違いそうになったらゾンビの真似をして驚かせよう」と話していたが、次に出くわしたのが警備員だったのでやめた。

野球場まで歩き、誰かの忘れ物のバットとボールで遊んだ。公園のブランコだって、子供がいない夜なら大人が乗ったっていい。

気づいたら汗をかくほどはしゃいだ。

今年の夏は海もプールも行けないまま、あっという間に終わってしまった。

 

わたしの唯一、夏らしい思い出がこの夜かもしれない。

 

ポークジンジャー

お腹が空いたが自炊も面倒…そんな時は「カヤシマ」へ向かう。

初めて「カヤシマ」へ訪れたのは、まさに「吉祥寺時間」のライター面接時だった。

レモンソーダを注文し、編集長たちが来るのを待っていたが、某ビールメーカーのジョッキに入って運ばれてきたので、昼から酒を頼んだと思われるのではないかと内心ヒヤヒヤした。

「ここは、豚の生姜焼きを『ポークジンジャー』って記載しているんだけど、それが言い得て妙なんだよ!」
面接時にそう語っていた編集長の言葉を思い出し、メニューを見ると、ポークジンジャーカレーという、なんともよくばりなメニューがあったのでそれを注文する。
「確かに、これはポークジンジャーだ!」

ほんのり甘い味付けの豚肉が、具材の角が取れるまで煮込まれた辛口カレーとマッチする。

「豚の生姜焼き」と「ポークジンジャー」。

言葉の持つ意味に違いはないが、表記によって味のニュアンスの線引きがされている気がする。

カヤシマの味は、たしかに紛れもない「ポークジンジャー」だった。なぜだろう、それがしっくりくるのだ。

 

中神円

1993年(平5)7月30日、東京生まれ。スカウトを受けて芸能界入り。

15年にTBS系「ホテルコンシェルジュ」、17年にテレビ朝日系「ドクターX~外科医・大門未知子~」に出演。

[出演作品] 映画「空の瞳とカタツムリ」 ビッケブランカ MV 「ウララ」

脚本や監督も務める。2020年12月、芥川賞受賞作家羽田圭介と結婚。

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