夏の井の頭公園は穴場
夏の井の頭公園はちょっとした穴場だ。
桜満開の春、色付く紅葉が美しい秋。井の頭池を囲う歩道には人があふれるほどになり、皆片手に食べ物やお酒を持って連日お祭りさながらだ。
しかし、夏の緑豊かな公園はオフシーズンであるものの、見逃せない四季の1つだと気づいた出来事があった。
GWある日の朝5時、早朝に珍しく目が覚めてしまった。
いつものように新聞を取りに玄関を出ると、すでに日が昇り、雲がなく空が青い。緊急事態宣言に伴う自粛期間中ほとんど家にこもっていたため「人も少ない朝なら」と、身体を動かそうと公園に向かってみた。
運動は苦手なので、軽いジョギング程度にと薄手のジャケットとスニーカーを着装。
公園に着いたのは6時前で、人は全くといっていいほどいなかった。井の頭池の周りを走り始めると、まばらに人とすれ違う。
犬の散歩をする歳を重ねた女性、おそらく走り慣れている若い男性ランナー。
池の外周は約1.5kmで、半分も走っていないけれどすでに息が切れて苦しい。
ふと身体の左手側の池に目をやると、弁財天の赤い社と、吹き上げる小さな噴水が日の光に当たって眩しかった。
少し活力が湧き、せめて一周はしようと足を前に進める。
無心に走り、3/4を超えたラストスパート。
その時、思わぬ景色に目を奪われた。
青々とした新緑が池に反射し、まさに「絵具を落としたような」緑いっぱいの鮮やかな景色が水面に浮かび上がっているのである。
強くなった日差しも相まって、一帯がキラキラと光っている。ふと昨年、北海道旅行で訪れた美瑛町の観光名所「白金 青い池」と重なった。
青い池は、ほとりに植った白いカラマツが自然の作用で青くなった池に反射し、濁りない水面が出来上がることから神秘の池と呼ばれている。
しかし私が今いる井の頭公園は対照的にも人がおらずオフシーズンなのに、神秘の池とリンクするのが不思議だった。
苦しいけれど、最後まで走ろうと力を入れてゴールへ向かう。走ったのはわずかな距離だけど、小さな発見ができた朝だった。
いつもとちょっと違う時間と季節。気持ちが少し軽くなった。
多奈加亭のフレンチトーストが食べたい
美味しいお店のフレンチトーストが食べたい。
日に日に想いは募り、ひたすらに美味しそうなお店をネット検索する。
なぜこんなにもフレンチトーストが食べたいのかというと、遡ること4月。
緊急事態宣言に伴い多くの飲食店が閉業する中、SNS上では「自宅で簡単に作れ、カフェ気分が味わえるメニュー」として、フレンチトースト作りがちょっとした流行になっていた。
おしゃれなインスタグラマーの写真を見ては「作りたい」とミーハー心がくすぐられ、何度か真似をして作っていた。
しかし、お店で売っているような「ふわトロ」な仕上がりには程遠く、理想的なフレンチトーストへの憧れが強くなっていたのである。
そんなモヤモヤを抱え迎えた5月末のこと。近所のコンビニを訪れた際、40ポイント(現金40円分)で小岩井のコーヒー牛乳(130円)が引き換えできると知り、お得に弱い私は迷わず購入した。
普段安価な商品しか買わないので、高級路線の小岩井ブランドを手にし、飲むのが楽しみだなあとワクワク。
そうだ、前日に食パンを買っていたんだった。せっかくならコーヒー牛乳を使ってフレンチトーストを作ろう!と決めた。
早速家に戻り、材料を準備する。
本当はパンが厚切りだとフワフワになるそうだが、あいにく6枚切のため(忘れていつも同じパターン)、せめてもと卵と牛乳を合わせた液体を裏ごしてなめらかにする。液体をパンに染み込ませ少し冷蔵庫で休ませたら、いよいよ肝心の焼きに入る。
高級品は無駄にはしない!と気合を入れ、バターを敷いてパンを投入。3分ほどで裏返すべく蓋を開けた。
すると、映画館で売っているキャラメルポップコーンのような、甘い香りがフワッとのぼってきた。
たっぷり砂糖が入り、ねっとりとしたキャラメルがかかったジャンクなポップコーンの香り。
想定外の化学反応に「美味しくできる」と確信、絶対にこがさないと心に誓い、カリカリの焼き上がりを目指しさらなる気合を入れた。
無事焼き上げ、いざ実食。食べる時にはすでにキャラメルの香りは薄れてしまっていたが、慎重に焼いたことが功を奏したのか、中ふわ、外カリに仕上がった。
食べながら、もう少し牛乳を入れてもよかったかなあ、次はシロップをかけてみようかな、と考えを巡らす。
お店のふわトロには及ばないけれど、自在にアレンジできるのがおうちカフェの醍醐味。しかし、やはり本格的な味わいをしにお店に行きたいとますます思う。
一番気になるのは東急百貨店裏に位置する老舗紅茶専門店・多奈加亭。モーニング限定で、絶品のフレンチトーストが味わえるとのこと。
それに、今年訪れた星乃珈琲店のホイップがたっぷり乗ったフレンチトーストもまた食べたい。楽しみが生まれいていく。