吉祥寺を俯瞰し、街を取り巻くあらゆる問題にフォーカス。
魅力的な街並みを未来に残していくために
私たちが今やれること、考えるべきこととは?
第2回 個性溢れる街
この数十年で吉祥寺は大きく変貌した。
かつては、昔ながらの商店が残り、独自のスタイルを貫く店や、いい意味で商売っ気のない店も多く、個性が際立つ街だった。
しかし住みたい街ナンバーワンとして注目を集めるようになり、東京の人気エリアの仲間入りを果たすと、地価は一気に跳ね上がった。
武蔵野市の地価は、多摩エリアでトップクラス、東京23区に引けを取らないほど高額で、年々上昇傾向に。
それゆえに、個人経営の小規模店の開業が容易にできなくなり、潤沢な資金を持つ大手チェーン店の進出が相次いだ。
その結果、吉祥寺で独立を夢見ていた経営者やシェフたちがこの街を離れ、西荻窪や三鷹など他の街で開業したり、念願叶って吉祥寺に店を出せても金銭的負担が大きく、志半ばで撤退を余儀なくされる店が続出。
新進気鋭な個人店が減り、入れ替えの激しい街としても知られるようになり、かつての吉祥寺らしさが失われつつあるように感じる。
転貸で、さらに店舗賃料は高額に
約20年前、筆者もハモニカ横丁で焼き鳥屋を任せられ、ひとりで店を回していた経験がある。
当時のハモニカ横丁は、魚屋や八百屋など、戦後の闇市から始まった商店や、民芸酒蔵「峠」や、鉄道模型店「歌川模型」といった、昭和の面影を残す店が撤退し始め、そこに新しいお店が進出し、過渡期を迎えていた。
吉祥寺の大地主である月窓寺から長く土地を借りていた商店主が、新たに店を開きたいオーナーに転貸しする店が多く出現。
それゆえに店舗賃料に、地代だけでなく、借地権者や建物所有者への支払いも発生し、1坪10万円を越える店舗が増えた。
筆者が働いていた焼き鳥屋も家賃が高額だったが、横丁の居酒屋ゆえに客単価がかなり低く、どれだけ忙しくても売り上げはなかなか上がらず、ほとんど給料をもらえぬまま、店は閉じることになった。
地価は上がる一方だが、それでも憧れの街である吉祥寺で出店を考えている人は少なくない。
開業までの足掛かりとして、営業時間外に他店舗を借りて営業する間借りや、複数の出店希望のオーナーが空間を共同で借りるシェアキッチン・シェアスペースを活用するなど、新しい営業スタイルを利用して事業をスタートする小売店も増えている。
お客さんの反応を間近で知れる「ハモニカ横丁中央通り朝市」
そして、吉祥寺で店を開くための挑戦の場として今注目を集めているのが「ハモニカ横丁中央通り朝市」だ。
過去にも様々な形で朝市が行われてきたが、今のスタイルになったのは2020年9月からと話すのは、朝市の広報担当で、自身もフェアトレードの店を出店している「ツナガルハートワーク」の坂口和隆さん。
「吉祥寺の日曜日の朝の顔として、毎月第2日曜の8時から実施しています。
駅前の不二家から吉祥寺ダイヤ街商店街のミュンヘンまでハモニカ横丁中央通りで開催しており、野菜や手作りお菓子などの食料品から作家さんが手掛けるクラフト作品まで、今では出店数は50軒以上。
費用300円で気軽に出店できるとあって、自分の作品を発表する場や店を持ちたい人がお客さんの反応を見る場として、老若男女問わず、多くの方がこの朝市を利用しています」。
12月11日に行われた朝市も多くの人で賑わっていた。
ベネゼエラのビーントゥバーチョコレートを販売する「ラクパイ」のアレハンドロ・パティーノさんは、今回初めて出店した。
「数年前からカカオ豆の輸入業をはじめ、今年から武蔵野市緑町にあるシェアキッチン『MIDOLINO』でチョコレート作りをスタートしました。
ネット販売もしていますが、お客さんと触れ合いたくて出店を決めました。
多くの方が立ち止まり、チョコレートを味見してくれて、手ごたえを感じることができました。
今後も参加したいし、ゆくゆくは吉祥寺で実店舗を持ちたいと思っています」とパティーノさん。
変わらないもの、変わりゆくもの。
注目度が高い人気の街であるからこそ地価の高さは否めないが、魅力的な街であり続けるために、個性を感じられる街並みを残していかなければならない。街を形成するのは店であり、人である。
新たな挑戦や文化を受け入れて、個人が活躍できる、懐の深い街にしていきたいものだ。
第1 回 喫煙所問題
先日、仕事で新小平駅に降りたところ、改札を出てすぐの広場に、カラフルなグラフィックで彩られた喫煙所を発見した。
喫煙所というと、汚い、狭い、暗いがつきものだが、そのイメージを覆す明るい空間で、緑豊かな街に溶け込んでいた。
気になって調べてみると、地元の武蔵野美術大学とJTがタッグを組み、武蔵美の学生たちが小平市の観光・特産をモチーフにデザインしたそう。
地域への関心や愛着が高まる空間造りを目指し、喫煙者、非喫煙者双方を考慮した、画期的な取り組みだと感じた。
街の喫煙所の閉鎖・撤退が相次ぐ。
ここ数年、愛煙家の肩身はどんどん狭くなっている。
2020年4月に、喫煙に対して厳しい規制が設けられた「改正健康増進法」が全面執行され、公共施設や飲食店など、多数の人が利用する施設の屋内は原則禁煙となった。
それに伴い、屋外の公共喫煙所に愛煙家が集中したが、東京オリンピック・パラリンピックの影響で、街の喫煙所を撤去する動きが加速。
さらに追い打ちをかけるように、コロナ禍で、密を避けるために閉鎖や人数制限が進み、多数の喫煙難民が発生。その結果、路上喫煙者の数が激増し、ポイ捨てが問題視されることとなった。
吉祥寺の公衆喫煙所は1か所のみ。
それは吉祥寺も例外ではない。
喫煙できる場所が少なくなり、路上喫煙やポイ捨てが増えたことで、武蔵野市は2021年4月に、公園口から歩いて1分ほどの場所に、喫煙トレーラーハウスなる公共喫煙所を設置。
これで問題は解決したかと思いきや、そう簡単ではなかった。
コロナ禍の影響で、利用人数が通常の5割の6名と制限されたこともあり、連日大混雑。
多くの買い物客で賑わう週末は、人気のラーメン屋か?と思うほど、大行列ができるほどだ。
そんな列に並んでまで吸いたくないと言わんばかりに、近くで堂々と路上喫煙する人の姿もちらほら。
これだけ活気のある街で、公衆喫煙所が1か所のみというのは圧倒的に足りない。
かつては、北口広場内に開放型の喫煙所があったが、多目的広場の整備により2014年に撤廃されて以来、北口に公共の喫煙所は設置されていない。
喫煙所がない!野良タバコが問題化。
そして今、とある場所の野良タバコ問題が表面化している。
それは駅前の交番から交差点を挟んで、斜め向かい。セブンイレブン裏側のL字型の路地が、喫煙者のたまり場と化している。
慣れた感じで路地に入り、タバコを吸おうとしている人に、「ここは喫煙所ですか?」とたずねてみると、「喫煙所じゃないけど、前は灰皿があったし、みんな吸ってるから大丈夫だよ」と丁寧に教えてくれた。
以前この路地にあった居酒屋が灰皿を独断で置いていたらしいが、現在はそれも撤去されている。
しかし駅前再開発により、周囲の店やテナントが立ち退いたことで廃墟化し、路上禁煙地区からもギリギリ外れているため恰好の路上喫煙スペースになっているようだ。
周囲のビルには「タバコのポイ捨てご遠慮ください!」「この階段の近くで喫煙しないでください。煙が建物の中に入ってきますため」との貼り紙があり、周辺の方も大変迷惑しているようだ。
たしかに路地は煙で充満していた。
汚れていく街の様子を見かねて、近くのパチンコ店の従業員が吸い殻を拾っている姿も。
しかしそんな貼り紙や清掃活動にも見向きもせず、タバコを燻らし、当たり前のようにポイ捨てして、立ち去る人が後を絶たない。
紙タバコだけでなく、電子や加熱式と思われる長いままの吸い殻も多く、かなり目立つ。
タバコを愉しむのは勝手だが、吸うならルールとマナーを守ってほしい。
もしもそこが自分の家の前だとしても、路上喫煙やポイ捨てを許すのだろうか。
愛煙家なら、愉しんだら終わりではなく、吸い殻も自分の分身だと思って、喫煙後の後始末もしっかりと行ってほしい。
冒頭で触れた新小平の公共喫煙所には、中にもその周辺にも吸い殻は一切なく、街の美化に直結しているのはもちろん、喫煙者のルール・マナーの向上にも繋がっているように感じた。
吉祥寺北口の雑居ビルに囲まれたこの場所で、吸い殻の不始末やポイ捨てによって火事になったら、私たちの大好きな街並みは失われてしまう。
そうならないためにも、喫煙者一人ひとりの意識革命はもちろん必要だが、野良タバコ撲滅のために、北口にも公共喫煙所の設置を切に願う。
魅力的な街であり続けるためにも、路上喫煙・ポイ捨て問題の解決は責務。
タバコを吸う人も吸わない人も快適に過ごせて、共存できる街づくりを進めていきたいものだ。
新小平駅前の喫煙所。
壁面のグラフィックは、ブルーベリー、梨、糧うどん、玉川上水などがモチーフになっている。
武蔵野市が設置した吉祥寺公園口の喫煙トレーラーハウス。6 名の人数制限があるため、いつも入室待ちの列をなしている。
北口の路上喫煙現場。
喫煙者のたまり場になっており、吸い殻がたくさん。
吉祥寺に遊びに来た人だけでなく、近隣で働く人たちも多く利用しているようだ。
『吉祥寺ってこんな街』主催で12/18 地域清掃を実施します!
いつもお世話になっている吉祥寺に感謝の気持ちを込めて、吉祥寺の地域清掃を実施します。
ゴミを拾いながら、路上喫煙・ポイ捨て問題を考えてみませんか。
ぜひご参加ください。
実施日 12 月18 日(日)10:00 ~ 11:00 ※小雨決行【手ぶらでOK】
集合場所 駅前の交番から交差点を挟んで、斜め向かいセブンイレブン横