様々なジャンルの「モノ」や「コト」の文化発信地としてますます発展を遂げている街・吉祥寺。
吉祥寺は中心エリアに人や建物が集中しており、飲食店はどうしても狭くなってしまいますし、道も比較的狭い道が多いので行列ができやすく、実際に至る所で行列を見ることができます。
近年ではSNSでも色々な吉祥寺グルメがバズっていますが、そうした「バズっている」グルメだけでなく、地元民に長年愛されてきた老舗でも行列がよくできています。
今回は、そうした吉祥寺のある意味「名物」ともいえる「行列」と、代表的な行列の特徴や並び方について解説していきます。
吉祥寺の街の行列の特徴と注意点
吉祥寺の街の行列は人気のグルメや話題のカフェなど飲食関連の行列が多く見受けられますが、その他にも百貨店の福袋整理券配布に伴う行列、バス乗り場の行列、ライブハウスの入場行列などいろいろな行列を見ることができます。
吉祥寺という町は狭い中心エリアを地元歩行者や観光客が自由に巡ることができるよう、細い碁盤目状の街づくりがなされてきました。
少なくとも吉祥寺本町・北町・東町・南町といった住所に「吉祥寺」が含まれるエリアは、大部分が道路・歩道が狭く車が侵入しづらい細かい道が碁盤目状に入り組んでおり、正直な話、行列を作るには困るほど道が狭い街です。
それでも集まる人の数が多い吉祥寺ですから、道は狭いけれどどうしても行列は避けられないというジレンマを抱えています。
商店街で歩行者天国に見えるような場所も普通に車が入ってくる、それが吉祥寺という町です。
そんな吉祥寺の細い道路で行列をつくるには、できる限り一般歩行者や乗用車に迷惑が掛からないようにしなければなりません。
そのため、店側が工夫して行列を整理したり、客が率先してローカルルールを作ったりするなど、創意工夫を凝らしてきました。
こうして工夫を重ねて変容を遂げながらも長年受け継がれている吉祥寺の行列は、どのような行列であっても、ほかの店舗の邪魔にならないように列が時には角を折れながらも整然と続いており、いざこざや混乱も特に見受けられません。
このように民度の高い吉祥寺を長く保っていくためにも、行列に並ぶ際は
- 提示されているルールはしっかり守る
- 並び方がわからない場合には並んでいる人や周辺店舗の人に並び方を聞く
- 明らかに間違った並び方をしている人には声掛けを行って教えてあげる
といったような気づかい・気配りを欠かさないようにしましょう。
【吉祥寺の名物行列①】「小ざさ」の早朝行列
吉祥寺の駅を降りて北口から外へ出て、サンロード商店街の入り口前を左折するとある「ダイヤ街チェリーナード」をまっすぐ西へ。
元町通りとぶつかる角に位置するメンチカツで有名な「さとう」のすぐ手前、ハモニカ横丁へ続く細い路地にひっそりと面しているのが、吉祥寺で40年以上の歴史を誇る老舗和菓子屋「小ざさ」です。
わずか1坪の店舗を構え、メニューは主力の「最中」と、幻の「羊羹」の2つのみに絞りながらも、年商3億円を売り上げ、海外にも顧客を持つ吉祥寺を代表する老舗和菓子屋として、地元民は勿論、観光客にも知っている方は多いはず。
名物の「最中」は店頭で買えるのはもちろん、インターネット・電話・FAXでの通信販売でも買えます。
しかし、最中と違って「羊羹」は現在店頭でしか取り扱っておらず、1日の販売本数に制限があり(先着50名・1名につき3本まで)、早朝から並んだお客さんのみに配布される整理券との交換販売限定。
地元民でもなかなか手に入れるのは難しいことから、「幻の羊羹」という異名が付いています。
1日先着50名しか買えない「幻の羊羹」を求めて、吉祥寺では定休日を除く毎日、40年以上の長きにわたり、早朝からの行列が絶えず、今もなお行列に並ばないと買うことはできません。
並び方は、「小ざさ」店頭前から始まり、ダイヤ街チェリーナード沿いに左右交互に、早朝は閉まっている店舗や店前に並ぶことを許可された店舗の前に数人ずつ並んでいくスタイル。
「小ざさ」開店時間は午前10時ですが、羊羹を買う場合は、朝8時15分に羊羹と引き換えできる整理券が配布され始めるので、その時間までに並ぶ必要があります。
行列の作り方にはローカルルールがありますが、前に並んでいる人がいれば明らかに「小ざさ」待ちだとわかるのでその後ろにつくか、誰も並んでいなければ「小ざさ」の入り口前で待ちましょう。
筆者も実際に並びましたが、目安としては平日は早朝6時まで、週末は朝5時までには並ばないと、確実に手に入れることはできません。
詳しくはこちらの記事を参照ください。筆者が実際に並び見事(偶然)整理番号1番をゲットした体験記&実食レポートとなりますのでご参考まで。
- 店名:【時短営業中】小ざさ
- 住所:〒180-0004 東京都武蔵野市吉祥寺本町1-1-8
- 営業時間: 10:00-18:00 (緊急事態宣言中は時短営業)※メンチカツ販売は10:30~
【吉祥寺の名物行列②】「さとう」のメンチカツ行列
先ほど紹介した「小ざさ」の隣にある老舗精肉店「さとう」も、「小ざさ」以上に有名な行列店で、その立地の良さと行列の長さでは吉祥寺屈指の知名度を誇ります。
惣菜で有名なお店ですが、高級和牛で有名な精肉店としても知られており、お店で挽いた新鮮な和牛肉を惜しみなく詰めたメンチカツ「元祖丸メンチ」が看板メニュー。
その他にも「シューマイ」や「豚カツ」「自家製チャーシュー」でも知られていますが、行列に並ぶ人のお目当ては基本的にはメンチカツです。
先ほどの「小ざさ」と違って時間制限のある行列ではなく、直接商品を求めての大行列となるので、特に週末ともなると日中行列が絶えることがないといっても過言ではないくらい、多くの人が並びます。
並び方は「さとう」店頭を起点にダイヤ街チェリーナード沿いに少し折れつつ、それより後ろは元町通りをコピス吉祥寺方面に縦に行列が伸びていくような形で、これは昔から変わっていません。
行列が長く伸びていると、行列に並んだ時点で注意書きが書かれた整理券が配られ、それがメンチカツの引き換え券になります。
昔は使い回しのできるラミネートボードでしたが、現在の整理券は使い捨て仕様となっています。
かつては、平日はおひとり様20個まで、土日祝日はおひとり様10個までとメンチカツの購入個数制限がありましたが、現在は当面の間、購入個数制限なしで販売しています。
- 店名:国産黒毛和牛専門店 さとう
- 住所:〒180-0004 東京都武蔵野市吉祥寺本町1丁目1−8
- 営業時間: 10:00-19:00 ※メンチカツ販売は10:30~
【吉祥寺の名物行列③】「挽肉と米」の記帳行列
吉祥寺の駅を降りて北口から外へ出て、サンロード商店街に入り、エクセルシオールカフェの角を左折して元町通りへ。
元町通りをそのまま西に歩いて吉祥寺通りとぶつかったら、信号を渡り大正通りへ、丁度東急百貨店の敷地が終わるところの交差点を右折すると見えてくる趣のある白壁の建物が、吉祥寺で連日大行列を作ることで有名な「挽肉と米」です。
「挽肉と米」は、吉祥寺で人気のハンバーグ店「山本のハンバーグ」の運営者である山本昇平氏を含む複数のファウンダーによる新会社による新業態のお店で、2020年6月にオープンするや、今も行列が絶えない人気店になりました。
目の前で焼かれるハンバーグと、そのハンバーグをご飯の上に乗せる動画が人気動画SNS「TikTok」に載せられるや人気に火が付き、遂には客が集まりすぎて入りきれない事態に。
この店の最大の特徴である「事前記帳システム」は、開店前に先着順で希望の入店時間枠への記帳を受け付けるというものですが、あまりにも人気を集めすぎた末に悩みに悩んで取り入れたもので、当初は時間がもっと遅かったのです。
しかし、記帳システムを導入してもあっという間に記帳が埋まるということを繰り返した結果、今の「昼の部・夜の部一律で午前9時からの記帳」に統一されました。
「挽肉と米」の行列は、お店が面する通り沿いを、吉祥寺東急前の交差点まで続いたのち、大正通りの入り口側に折れ、そのまま吉祥寺通り方向へと続いていくように並びます。
筆者も実際に並んでみましたが、平日でも午前8時15分頃には20人近く並んでおり、筆者が並んだ際は、8時15分頃からあっという間に列が伸びていき、午前9時を待たずして行列は大正通りの入り口近くまで伸びていました。
記帳の際は入店人数・希望の入店時間・名前・連絡先などを聞かれ、それを店員さんが記帳してくれます。
カウンター席は最大20人が定員、30分刻みで時間枠が設定されており、昼の部(11:00~15:00)の早い時間、特にお昼時から順番に埋まっていきますので、昼の部に食べたい人は本当に早く並んだほうが良いです。
昼の部の定員と時間枠の数から計算すると最大で10枠・200人まで入りますが、完全入れ替え制のようには見えませんでしたし、コロナ禍ということもあって入店人数をかなりセーブしている可能性もあります。
2名以上の来客が比較的多いので、2名以上で来られる場合は朝8時くらいには並んでおくことをおすすめします。
現在時短営業中の夜の部(17:00~20:00)は最終入店時間が19時となっていますので要注意です。
夜の部は早いうちに埋まりきることはあまりないですが、遅くとも昼過ぎには満席となり記帳が終了します。
- 店名:挽肉と米
- 住所:〒180-0004 東京都武蔵野市吉祥寺本町2丁目8−3
- 営業時間:11:00-15:00 /17:00-20:00(緊急事態宣言および蔓延防止措置終了までは20時閉店)(入店は19時まで・19:15くらいには追加ハンバーグのラストオーダーをとっていた)
他にも吉祥寺の行列は至る所でみられる
上記のような名物行列はいずれも吉祥寺でよく知られたグルメですが、グルメや飲食店以外にも色々な行列があります。
特に吉祥寺近隣住民になじみ深いのは「バスの待機列」ではないでしょうか。
吉祥寺には南北に大きなバスターミナルがあり、特に北口は駅に隣接した巨大なバスロータリーがありますが、巨大であるにもかかわらず隙間なくびっしりとバス乗り場・降車場で埋め尽くされているほど、大小様々なバス路線が吉祥寺を中心として発着しているのです。
バスの待機列にはあまり親切な案内標識が道に書かれていることは少ないです。
基本的には路線バスの「前乗り・後ろ降り」の鉄則を守って、バス停標識と簡易屋根を基準に、先頭から順番に、並ばない人でも歩いて通れるように歩道の内側にスペースを作って、乗り場に平行に並んでいきましょう。
南町側のバス停は沢山の乗り場が井の頭通り沿いに整然と並んでおり、ガード下周辺など非常に歩道が狭くなっている場所がありますので、慣れている人の並び方に従ってなるべく道路側端っこに列を作るようにしてください。
七井橋通りや南一条通り・南二条通りなどが折れている区域のバス乗り場では、バス停ごとの間隔も狭いので、並びきれない人達が自主的にそうした井の頭通りを曲がる角を境に歩道を空けつつ、小さな通り沿いに更に列を作っているといった工夫がみられます。
しかし、吉祥寺東急REIホテル周辺の高架下のバス乗り場はあまりそうした逃げ場がなく、ただでさえ人がすれ違うにも大変なほど歩道が狭く、駐輪場やムーバスの停留所なども隣接していて、いつ見ても危険を感じます。
南口のこうした極端に狭く危険なバス停留所の問題は10年以上前から取り沙汰されていますが、今後なるべく早急に解決されるべき問題といえるでしょう。
吉祥寺の行列は狭い道に多くの人が並べるよう工夫されていた
以上、吉祥寺の名物行列からほかの行列まで、吉祥寺の行列の並び方やルール、特徴などを紹介しました。
吉祥寺はただ歩くだけでも多くの場所で「ちょっと狭いな」と感じることも多いくらい、歩道が狭い町として有名ですし、狭い路地のようであっても歩行者天国ではなく一般車道であることが多いので、普通に車も通りますし時にはバスや大型トラックも通り抜けていきます。
そんな吉祥寺で行列を作るために、お店や商工会は長年悩み工夫し続けてきました。
その成果が、いろいろな場所でみられる「トラブルのない整然とした行列」に表れているのではないでしょうか。
そうした歴史を尊重し受け継いでいくためにも、吉祥寺で行列に並ぶ際は、まず何よりもほかの交通者の邪魔にならないことを意識することが大切です。
そして、明確に提示されているルールや、地元ならではのローカルルールを徹底して守り、トラブルや事故が起こらないよう、気遣いや思いやりも忘れないようにしましょう。