吉祥寺周辺エリアには、部活動が盛んで全国大会常連の部活も多い藤村女子中学・高等学校や、自由な校風で芸能人の出身者も数多い明星学園中学・高等学校など、有名な学校が多く存在します。
そうした個性的な学校とともに私立の名門校が数多く集まる吉祥寺エリアの中でも有名なのが「吉祥女子(きちじょう-じょし)中学・高等学校」ではないでしょうか。
今回は、名門と名高い「吉祥女子中学・高等学校」がどんな学校なのかを紹介します。
【概要】「吉祥女子」は中学受験でしか入れない名門校
吉祥寺をはじめとした武蔵野エリアには、私立成蹊高校・法政大学高校・立教女学院高校など都内では名の知れた名門校も数多く存在します。
今回紹介する「吉祥女子中学・高等学校」も、それらの名門校に引けを取らないレベルの優秀な女子校です。
吉祥女子中学・高等学校は、第二次世界大戦前の1938年、今も続く出版社である帝国書院の創設者・守屋荒美雄(もりや-すさびお)氏により創設された「帝国第一高等女学校」を母体とし、戦災の影響で武蔵野市に移転後、1948年に吉祥女子高等学校が発足。
実は中高一貫校となったのは比較的近年の2007年のことで、併設されていた吉祥女子中学校と一緒になって完全中高一貫校となりました。
完全中高一貫校とは、中学1年から6年間一貫して指導し、高校入学時に一般から生徒を募集しないという形態をとる学校のことで、入学できるのは中学受験を突破した生徒のみ。
高校時には全員が中学からエスカレーターで入学するので、ほかの学校から高校受験で入学することはできません。
中学受験時の入学偏差値は61~64と比較的高めで、都内の中学校の偏差値ランキングでは19位に位置します。
早稲田中学校・慶應義塾中等部・武蔵中学校などと肩を並べ、周辺の女子校では白百合学園中学校(一般)とも同等くらいのレベルです。
【立地】「吉祥女子」は吉祥寺よりも西荻窪の方が近い
吉祥女子中学・高等学校は、武蔵野市吉祥寺東町に属していますし、「吉祥」の文字を掲げています。
しかしながら徒歩を前提とすると、実は吉祥寺駅よりもむしろ隣駅のJR中央・総武線西荻窪駅の方が近いという、なんとも絶妙な位置(吉祥寺東町の東寄り)にある学校であるというのも特徴的でしょう。
公式サイトが案内する交通アクセスとしては、西荻窪駅から徒歩8分、西武新宿線の上石神井駅からバスで15分(+最寄りのバス停「地蔵坂上」下車後徒歩8分)としか書かれておらず、吉祥寺にありながらも、吉祥寺駅からのアクセスが書かれていません。
吉祥寺駅からのアクセスとしては、吉祥寺駅北口バスロータリーから吉祥寺のコミュニティバス「ムーバス」の「東循環」に乗り、10分ほどで着くバス停「吉祥女子中学・高等学校前」を降りれば校門はすぐそばです。
筆者は卒業生ではないのでわかりませんが、通学路が制限されている可能性もあります。(2008年の時点では通学路は明確に制限されていて、中学生は西荻窪駅北口起点、高校生は同駅南口起点となっているようでしたので、今も制限がある可能性が高いでしょう)
しかし、もしそうした制限がないとしたら、うまくバスに乗り継ぐことができれば、吉祥寺駅からでも十分近いことがわかりました。(ちなみに自転車通学は自宅から学校までが直線距離にして1km~2km程度であれば許可されるようです)
この間、筆者も実際に訪れてみましたが、吉祥女子中学・高等学校の校門から見える学校の雰囲気は、赤レンガを基調とした本館校舎やシンボルタワーをはじめ、洋風でスマート、かつおしゃれといった印象を受けました。
学校の周辺は基本的に閑静な住宅街が広がりますが、そうした静かで素朴な周りの街並みと、学校敷地内の雰囲気がしっかりと分けられており、中央線からも見える校舎は格式高くかつインテリジェントな雰囲気を漂わせます。
中央線の高架もすぐそばにあるため、時折電車の音もしますが、気になるほどではありません。
本宿小通りに面し、近くには自然豊かな松籟(しょうらい)公園や、高架沿いにしっかり整備され「旧吉祥寺村開村百年記念」と書かれた時計台がある本田東公園など、緑もいっぱいありますし、高い建物も周辺にはないため、なかなか開放的です。
逆にそれくらいしかランドマークがない静かな場所で、コンビニも西荻窪駅から伸びる神明通りを横切った先にしかなく、徒歩5分くらいかかりますので、勉強にしっかり集中できる静かな環境であることは間違いないでしょう。
【学習環境】「吉祥女子」は女子校には珍しく理系志望が多い
基本的に全国的な傾向として女子は文系に進む率が高いことはよく知られています。
しかし、吉祥女子中学・高等学校は「理系志望の学生が多い」ことが非常に特徴的です。
正確には理系と文系がほぼ同数で、時折理系が文系を超えることがある程度ですが、それでも全国的な傾向に比べれば明らかに理系が多いといえます。
吉祥女子は高校2年生以降、文系クラス・理系クラス・芸術系クラスに分かれますが、高2では文系クラスよりも理系クラスの方が人数が多く、理系志望が52%と半分以上を占め、高3では多少人数が減り文系クラスの方が人数が多くなるものの、それでも理系志望が48%を占めています。
難関大への進学率も高く、とりわけ私大の医学科への進学率が高いことで知られ、実際に医学部など医療関係を目指す小学生が多く入ってきているようです。
【校風】「吉祥女子」の校風は「多様な価値観の尊重」
吉祥女子中学・高等学校は、中学受験ではそれなりに高い偏差値が要求される私立の中高一貫校であることから、「優等生」「お嬢様」のイメージが強い学校です。
もちろん、「主体的に勉強に取り組み、知的探求心を育てる」という進学校らしい校風でもありながら、実は校則はそこまで厳しくなく、制限されるのは制服と髪色くらいのもの。
多様な価値観の尊重を校訓とし、「比較的自由な校風で生徒主体の学校生活を送れる」と評判で、先生たちも生徒たちの学習や活動をしっかりサポートしてくれます。
中でも特徴的なのが「八王子キャンパス」や「富士吉田キャンパス」といった校外施設が充実していることで、八王子キャンパスは部活動の練習や試合、大運動会などが行われる広いグラウンドを擁し、富士吉田キャンパスは林間学校をはじめとする合宿施設や課外学習施設が充実しています。
国際教育にも力を入れており、アメリカのウォールナットヒルスクールをはじめ、オーストラリア・カナダ・中国・韓国の中学や高校と姉妹校・友好校として協定を結んでいて、姉妹校訪問や一年留学などの制度もあります。
国内では、東京農工大学・東京学芸大学・国際基督教大学・東京外国語大学・順天堂大学と高大連携協定を結んでいるため、大学と連携した教養講座も毎年多く開催しており、コロナ禍の現在では教室と外部を結ぶオンライン講座も多く開催しています。
独自のカリキュラムで濃密な授業を行うことでも有名で、高校の範囲にとどまらない知的探求心を存分に追求できるでしょう。
【出身者】「吉祥女子」出身者は女優やアナウンサーなど多数
吉祥女子中学・高等学校は著名な出身者が数多くおり、例えば元グラビアアイドルで女優・タレントの釈由美子さんや、女優で元おニャン子クラブでも知られる生稲晃子さん、アニメ『彼氏彼女の事情』主人公・宮沢雪乃役で知られる声優の榎本温子さんなど、そうそうたる方々がそろっています。
近年では国民的アイドルグループとして著名なAKBグループに属するアイドルの出身者も多く、欅坂46(現在は「櫻坂46」に改名)の1期生メンバー・原田葵さんや、AKB48・SDN48に所属していた戸島花さんなどがいます。
構内には、学校外からも見ることができる7号館正面に彫られた「INGENIUM VESTRUM EXCOLITE(個性を十分に伸ばしなさい)」をはじめ、ラテン語の文章があちこちに刻まれています。
富士寮 祥林館には「TE TE IPSAM EXERCE (すすんで、自らを鍛えよ)」、富士寮 祥友会館には「FLAGRA COR IUVENIS (燃えよ若者の命)」、本館には「SEVERVS TIBI ALIIS FACILIS ESTO(人に優しく自分に厳しく)」と彫られています。
こうした各館に彫られたラテン語の文章からも、著名な出身者を出す「個性」や「情熱」、「責任感」といったスクールモットーが伝わってくる気がします。
吉祥寺の名門校「吉祥女子」で充実の学校生活を!
以上、吉祥寺の名門女子校「吉祥女子中学・高等学校」の概要、立地(アクセス)や学習環境、校風などの情報も交えつつ、実際に学校周辺を訪れてみた感想なども含めて、学校情報をお送りしました。
戦災により帝国第一高等女学校のあった新大久保から吉祥寺の地に移転したのが1946年、新制中学校発足が1947年、新制高校発足が1948年、完全中高一貫校となったのが2007年。
第二次世界大戦後、急速な復興を武蔵野市吉祥寺の地で果たし、そこから着実に歴史を積み重ねてきた伝統ある学校として存在感を示してきました。
そして近年では都内女子中学の「新御三家」として知られ、偏差値も上がり志望者数も増えています。
その影響もあり入学が難しくなってきていますが、オンラインでのオープンキャンパスや各種講座など先端的な取り組みも多数行っていますので、吉祥寺周辺にお住みの方で娘さんの中学受験を考えている親御さんは、吉祥女子の魅力をぜひ知ってみてはいかがでしょうか。