日本の首都東京には、カレー店ひしめくカレー激戦区と呼ばれる街がいくつかあります。
たとえば、カレーグランプリを開催しており歴史あるカレーの名店が集まる「神保町」や「下北沢」をはじめ、エスニックなカレーや創作カレーで知られる「中野」「高円寺」、薬膳カレーや南インドカレーなど癖のある店が点在する「荻窪」など。
「吉祥寺」はそれらカレー激戦区を多く抱える23区と、23区外の多摩地域の境目にある人気の街であり、多摩地域有数のカレー激戦区でもあります。
タイ・インド・ネパール・スリランカ等の本格エスニックカレーが多く集まる一方、昭和の時代から続く日本ならではの創作カレーの名店も軒を寄せ合い、多種多様なカレーを食べられる街として知られている吉祥寺。
そんな吉祥寺で近年急激に増えているのが「間借りカレー」です。
間借りカレーとは、夜間は焼き肉店やレストランとして営業しているお店のスペースを借り、ランチ営業だけを行うカレー店のことです。
今回は、吉祥寺で近年話題を集める間借りカレーを中心に、吉祥寺でおすすめのカレー店を紹介していきます。
※なお、営業時間については緊急事態宣言発令中のため変更されている可能性があります。ご注意ください。
吉祥寺駅北口の「ピワン」はエスニック香る2種盛りカレーが魅力
吉祥寺駅北口を出て左に行き、吉祥寺通りに出てまっすぐ北へ。
東急百貨店の面する大正通りを左に曲がり、カレー食堂「リトルスパイス」を通り過ぎてすぐの西三条通りを右折後少し歩くと、イベントスペース「キチム」があります。
この閑静な住宅街にひっそりとたたずむイベントスペースを間借りして昼間だけ営業しているのが、吉祥寺の人気カレー店「ピワン(piwang)」です。
かつてこのお店は吉祥寺サンロード商店街付近に広がる飲み屋街「ハモニカ横丁」に店舗を構えていましたが、2020年2月に移転。
現在はイベントスペース「キチム」での間借り営業となっています。
営業時間は11:30から16:30までで、夜の営業はやっていません。
店はカフェも併設されておりおしゃれな(北欧・ヨーロッパの古い喫茶店のような)雰囲気で、広々としたテーブル席やカウンター席でゆったりとくつろげる印象。
ピワンの看板メニューは「2種盛りカレー」。
筆者が訪れた日は日替わりカレー(豚バラ肉と大根のカレー)とチキンカレーの2種盛りでした。
一見浅いようでしっかり深堀された独特なお皿の真ん中に縦線を描くようにサフランライスが敷き詰められていて、左右にカレーが盛られているといった構図。
サフランライスの中央には副菜の生姜の佃煮が乗り、彩も豊かです。カレーはサラサラしたスープのようで、硬めに炊かれたライスとの相性は抜群。
チキンカレーはガツンとくる辛さに柔らかく煮込まれた鶏肉のコクが混ざり何とも言えない美味しさ。
日替わりカレーの方はマイルドですがしっかりとスパイスの香りが漂い、サフランライスの風味と共にエスニック感が漂います。
ちなみに大盛にすると、小さい茶碗に追加のサフランライスが盛られて出てくるので、サフランライスだけを食べても良し、追加で混ぜても良し。
お店はコロナ対策が徹底されており、1グループ2名までの入店制限がかけられていますのでグループでお越しの場合は要注意。
入店前と退店時には入り口に置いてある消毒液で手指消毒もしっかり行いましょう。
店名:ピワン(piwang)
住所:〒180-0004 東京都武蔵野市吉祥寺本町2丁目14−7 地下 吉祥ビル
営業時間:11:30-16:30
「カレーハウスゴッド」はチーズが大量に盛られたドライカレーが看板メニュー
吉祥寺駅北口を出たら、目の前に開けている吉祥寺を代表する商店街「吉祥寺サンロード」をひたすらまっすぐ進みましょう。
ラーメン屋の「一蘭」、牛タンの「ねぎし」などを横目に通り過ぎつつ、本町新道と交差する信号を渡り、ミスタードーナツが見えてきたらその2つ先の建物「瑠璃ビル」の3階にあるのが、これから紹介する「カレーハウスゴッド」です。
先ほど紹介した「ピワン」と同じく間借りカレーのお店で、営業は昼間のみ。夜は焼き肉屋さんに姿を変えます。
入り口が狭く小ぢんまりとしたお店ですが、風情を感じさせます。感染症対策なのか焼肉店の煙対策なのか、テーブル席がすだれで仕切られているのが何とも独特。
夜は焼き肉店ということもあって、テーブルのすぐ上には大きな排煙フードが下がっています。
普通のカレー店なら落ち着かないであろうこの構造ですが、これがまたまさしく間借りカレーといった感じのアンバランスさ。
間借りカレーを前提として考えた時には、かえって不思議な魅力を感じさせます。
このお店、2019年に有名テレビ番組『マツコの知らない世界』でも放映されたことがあるそうで、看板メニューはこれでもかというくらいうずたかくチーズが盛られた「チーズドライキーマカレー」。
そちらも気にはなったのですが、筆者はあえてインパクトのない方の看板メニューであると思われる「GODカレー」を注文しました。
GODカレーはプレーンなカレーとドライカレーのあいがけで、プレーンなカレーの池にご飯とドライカレーが乗った島が浮かんでいるような盛り付け。
辛さが選べるのはプレーンなカレーのみで、ドライカレーのほうは辛さを変えることはできないので、プレーンなカレーは辛口にしてもらいました。
プレーンなカレーはしっかりと辛く、ドライカレーは非常にマイルドな辛さ。
付け合わせのピクルス類も含めてとてもフルーティーな風味を感じさせます。
ガツンとくる辛さもありながら、口当たりは甘くマイルド。
そうしたカレーが好きな方にはばっちりハマるであろう、豊かな味わいが楽しめます。
ちなみに、チーズドライキーマカレーの方ははす向かいの席のカップルが注文していましたが、ドライキーマの中に温泉卵が隠れているようで、チーズも合わさっておそらくはしっかりとしたコクと甘味が感じられるのではないかと思います。
「今度はチーズドライキーマカレーを注文してみたい」そんなことを思いながら店を後にしました。
店名:カレーハウスゴッド
住所:〒180-0004 東京都武蔵野市吉祥寺本町1丁目11 瑠璃ビル 3F
営業時間:11:30-16:00(L.O.15:30)※ルーがなくなり次第終了
歴史ある名店「まめ蔵」のスペシャルカレーは吉祥寺屈指のおいしさ!
さて、ここまでは間借りカレーの名店を紹介していきましたが、間借りではない吉祥寺に古くからあるカレーの名店を最後にご紹介しましょう。
吉祥寺北口には先ほども名前だけ挙げた「リトルスパイス」や、リトルスパイスのすぐ近くにある「茶房武蔵野文庫」といった、吉祥寺を代表するカレーの名店が点在しています。
まさにカレー激戦区らしいホットスポットともいえる場所ですが、そこからもう少し南に行ったところに、閑静な住宅地に混ざってひっそりとたたずむ歴史あるカレー店があります。
吉祥寺駅からのアクセスは、北口を出て左にずっと歩き、吉祥寺通りを渡って更にそのまままっすぐ西へ。
サンロードとはまた違った風情のある中道通りを行き、ラーメン屋「一圓本店」の角を右折してカントリーロードを少し歩くと、木枠が組まれた情趣のあるおしゃれなお店が目に入るでしょう。ここが今回紹介する「まめ蔵」です。
まめ蔵の創業は1978年。
吉祥寺の同地で40年以上にわたって営業を続ける老舗のカレー店です。
当初は「カレーと珈琲の店」として、喫茶店でカレーを出すというようなスタイルで営業を始めたそうで、そこは喫茶とカレー屋を兼ねる「茶房武蔵野文庫」とも共通するところがあります。
茶房武蔵野文庫の方も古き良き喫茶らしい風情がありますが、歴史としてはまめ蔵の方が10年近く早くオープンしています。
古くから近隣の明星学園高等部の生徒に親しまれ、時に音楽の演奏会も開かれるというパブリックスペース的な役割も果たしながら、まめ蔵はその歴史を重ねていきました。吉祥寺の比較的閑静な住宅街にありながら、むしろだからこそというべきか、吉祥寺という街の著しい変化にも負けることなく、現在の感染症という未曽有の事態にも、腰を据えて息長く営業を続けています。まさに吉祥寺カレーの老舗中の老舗といっていいでしょう。
さて肝心のカレーですが、筆者が注文したのは「スペシャルカレー」。
具はチキンをベースに、ミニトマトやカイワレ大根、パプリカ、茹で卵などで彩り豊かに盛り付けられています。
青色の装飾がなされたおしゃれなお皿ともマッチして非常におしゃれです。
古風で武骨なカレーではなく、見た目にもしっかりこだわったデザイン性も高い煌びやかな雰囲気を醸しています。
口当たりは非常に甘めで、あとからしっかりと辛さが出てくる感じです。
まろやかでコクがあり、後味にちょっとフルーティーな甘さも残してくれるような、奥深い味わい。
具沢山ではありましたがあっという間に平らげてしまいました。
喫茶としての空気を今に残すカレー店なので、昼は珈琲・紅茶・ジュース、夜はビールやワインを楽しむのもアリ。
テーブル席中心のゆったりとした空間なので、ゆっくりと時間を忘れてくつろげるお店です。
店名:カレー屋 まめ蔵
住所:〒180-0004 東京都武蔵野市吉祥寺本町2-18-15
営業時間:11:00~21:00(L.O.20:30)※15:30-17:00は感染症対策のため換気や消毒のクリーンタイムを設けており入店不可
多様なカレー店が集う街「吉祥寺」でぜひともカレー食べ歩きを!
吉祥寺には他にもいろいろなカレー屋が混在しています。先ほど紹介したまめ蔵のすぐ近くにも、スープカレーの名店「Rojiura Curry SAMURAI」がありますし、カレーハウスゴッドの近くにはギャラリーも兼ねた野菜たっぷりの欧風カレーを提供するカレー食堂「モモカレー」もあります。
また、南口の井の頭公園周辺には、タイ・インド・ネパールなどエスニックなカレー店もあり、南インド風の創作カレーを提供する店もあります。
カレー店ではありませんが、吉祥寺駅南口にある日本最古の歴史を誇るライブハウス「吉祥寺曼荼羅」でも、看板メニューとしてカレーを提供しています。
このようにお店ごとに特徴が際立っており、方向性が明確に異なっているのが吉祥寺カレーの特徴であり、魅力でもあります。
吉祥寺に行きなれている人でも、吉祥寺のカレー店は奥が深く制覇しきれていない人も多いはずです。
たまの休日には時間を作って、こうした種々雑多で多種多様なカレー店の集う街「吉祥寺」でカレー食べ歩きをしてみてはどうでしょうか。
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