吉祥寺を支えてきたあの人、あの店主 Vol.5(TONY’s PIZZAマスター 藤原亀吉さん)

数年前、スーパーで買い物をしている時にすれ違った人からチーズの芳醇な香りがした。

振り向いてみると、「トニーズピザ」マスターの藤原亀吉さんだった。

この話を本人にすると、「よく言われるんだよ! 毎日体洗っているんだけど、ピザ屋を始めて54年。チーズの香りが体にしみついちゃっているんだろうなぁ」トニーズピザは、1968年に代々木で開業し、その後吉祥寺に移転。名物はニューヨークスタイルのチーズたっぷりピザ。

自家製の生地に、厳選した具材をのせて、オランダ、デンマーク、ドイツの種類の異なるチーズをこれでもか!と大量トッピングして、アメリカ製のオーブンで焼き上げる。

「僕は半世紀以上前に現地で学んだスタイルを今も大切にしています。チーズは塊で仕入れて、種類ごとにカットの手法を変えて削り、新鮮なものだけを使用するのがこだわり。生地を練る時に打ち粉を使わないことで、生地本来の味を楽しめます」

藤原さんは、日本にニューヨークピザを広めた先駆者。

しかし渡米の目的は全く違う理由だった。

「1961年のケネディ大統領の就任演説に感銘を受けて、政治学を学びたいと思ったんだ。でもね、当時は自由に海外に行ける時代じゃなかったし、僕は学生でお金もなかったから、大変だった。犬養毅の孫の犬養道子をはじめ、留学経験者に話を聞いたり、政治家の大野伴睦の元に、ビザを発給してもらえるように直談判に行ったりね。怖いもの知らずだよね(笑)。最終的に中国の貿易会社の社長に頼み込んで、見事アメリカに行けることになったんだ。でも、ニューヨークで国連に勤めている英国人新聞記者のメッセンジャーボーイをしている時に、尊敬するケネディ大統領が暗殺されて、生きる希望を失った。そんな絶望の最中にいる僕を救ってくれたのが、安くてうまいピザだった。それで現地の名店『TONY’s』で修業して、帰国後ピザ屋を開いたんだ。僕は本当に人に恵まれている。84歳になる今も、いろんな人の支えがあるからこそ店を続けられている。だからね、今度は僕が恩返しする番。おいしいピザを作り続けることもそうだけど、夢を持った若者たちが輝ける場所を作りたいなぁと、いろいろ考えているんだ」

チーズがとけるピザ。4 分の1が1人前で、935 円~。ピザは12 種類あり、おすすめはミックス。

テイクアウトや通販も行っている。

ケネディ大統領の写真やナンバープレート、クラシックなポスターなど、マスターの夢が詰まった店内もオールドアメリカンスタイル。

住所武蔵野市吉祥寺南町1-6-9
電話番号0422-49-1021
営業時間11:30~21:00(20:00 L.O.)
休業日月曜(祝日の場合は翌日)
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