吉祥寺を支えてきたあの人、あの店主 Vol.3(武蔵野珈琲店)

井の頭公園に続く七井橋通り沿いのビル2階に佇む「武蔵野珈琲店」。

昭和57年創業、吉祥寺でも指折りの老舗で、又吉直樹さんの小説『火花』に登場することでも知られる名店。

マスターの上山雅敏さんは、27歳の時にこの店を開いた。

「高校生の時にイタリアンレストランでアルバイトしてから、40以上の飲食店で働いてきました。

シェフの道を考えたこともありましたが、そんな時に先輩が経営する原宿の喫茶店「アンセーニュダングル」で飲んだ珈琲があまりにも美味しくて衝撃を受けたんです。

そこは、1杯1杯丁寧に淹れて提供するスタイルをいち早く取り入れた店で、インテリアデザイナーの松木新平さんが手がけた内装も素敵だった。

それが運命の出会いとなり、その店をはじめ、さまざまな喫茶店の運営を任せられるようになり、その経験を生かして独立したんです」上山さんは神奈川の平塚出身。

吉祥寺は井の頭公園へデートに来たことがある想い出の場所。

店を探している時に、今の場所を発見した。日中は窓から陽光が降り注ぎ、夜は間接照明の優しい灯りに包まれる。

カウンターには、マイセンなどのカップ&ソーサーが並び、いつもセンスの良い花が活けてある。

そして会話の邪魔をしない程度に、クラシック音楽が心地よく流れる。

「松木さんから〝ここは上山くんの居間。そこにお客さんが来てくれるわけだから最高のもてなしをしてお迎えすること。

そうすれば長く愛される店になる〟と言われたことを教訓にして、派手なことは一切せず、今もそれを続けています。

店のオリジナルブレンドは、萩原珈琲店からストレートの豆を仕入れ、店でブレンドしています。

このスタイルは創業以来変えていません。ケーキも全て手作りだし、紅茶好きにも喜んでもらえるよう茶葉の種類も増やしました。

中国の茶聖と呼ばれる、唐時代の茶人・陸羽が、〝自然と親しみ、友と語らい、茶を楽しむ。

是、すなわち人生最良の法なり〟という言葉を残しています。

ここで言う茶はあらゆる飲み物を指し、コーヒーや紅茶もしかり。

おいしいものは心を豊かにし、人生も豊かにしてくれます。

友人とたわいもないおしゃべりもよし、ひとり静かに読書するのもよし。

幸せや安らぎを感じながら、各々が自分の時間を過ごせる場所でありたいです」

炭火焙煎したコロンビア、ブラジル、マンデリン、モカマタリなどを配合したブレンドコーヒー620円と、ガトーショコラ530円。

上山さんの作業の様子が眺められるカウンター席のほか、七井橋通りを見下ろす窓際席、テーブル席、おひとり様向けの席もある。

住所東京都武蔵野市吉祥寺南町1-16-11 萩上ビル2F
交通アクセス「吉祥寺」駅から徒歩3分
電話番号0422-47-6741
営業時間11:00〜22::00(L.O.21:30)
休業日年中無休

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